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週刊「社会保障」  1/7号特別インタビュー
「医療制度改革への対応」

―持続可能な制度に抜本改革―


保険者の統合・再編を促進
<医療制度改革大綱の評価等について>
 自民党は、今回の医療制度改革の議論にあたって「国民の理解と信頼を得る、改革の名にふさわしい改革とすべきで、財政の辻褄合わせのための改革ではいけない」というスタンスで臨んできた。とりわけ、将来にわたって持続可能で良質な医療と皆保険制度を再構築するための改革が必要となっている現状のなかで、限られた11月末という目標に向かって、自民党としての考え方を示し、議論を重ねた結果、与党三党の間でも合意できた部分も多く、そういうプロセスを経て、政府・与党社会保障改革協議会の大綱が決定できたことは、非常によかったと思っている。
 大綱決定に至る終盤の争点は、高齢者医療制度のあり方、医療保険制度の給付のあり方、診療報酬・薬価基準等の見直し、医療保険制度の一元化の問題、医療費伸び率管理の問題の五項目であり、ぎりぎりまで議論を重ねたが、基本的にわれわれの考えを受け止めた形で盛り込まれたと思う。また、これらに加えて、医療制度の将来方向に向けての議論をはじめ、医療提供体制を含む保健医療システムの改革といった、自民党医療基本問題調査会と厚生労働部会の合同会議でなされてきた議論については、ほとんど大綱に盛り込むことができたと考えている。

<被用者本人患者負担三割の是非について>
 患者負担三割の問題について、われわれは「改革なくして負担増のみを国民に押し付けるような考え方は採るべきではない」というスタンスから、まずは保険制度である以上、14年度に政管健保の保険料引き上げを前倒しし、その後の効果をみて、三割負担=七割給付統一の課題について検討すべきことを主張し、大詰めの協議を行った。
 最終的に「総報酬制の下で、平成15年度から政管健保の保険料を予定通り引き下げ、必要な時に七割給付で保険間の統一を図る」と大綱で明記されたが、われわれは、「必要な時に」に関しては、まさに必要があればの意味と受け止めている。それは15年度であるかもしれないし、16年度あるいは17年度になるかもしれないが、いずれにしても、保険料引き上げの効果や経済状況等を総合的に見極めたうえで検討すべき課題である。
 こうしたわれわれの考え方の背景には、平成9年に被用者保険本人の負担割合を二割に引き上げたが、当時、そのことが景気悪化の原因として指摘されたほか、そもそも二割に引き上げたのが13年ぶりであったという経緯がある。さらには、最近まで大臣をはじめとする政府側からは、「八割程度で給付率は統一」とする答弁も行われてきた経緯もあり、そうした主張との整合性も考慮して、考え方を整理した。

<医療保険制度のあり方について>
 保険者の議論に関してわれわれは、まずは被用者保険の保険料引き上げで対応すべきことを主張してきたが、そのことは、国民の負担もあるが、一方では事業主負担も伴う話である。また、保険者としては、健保組合・健保連や政管健保の保険者たる社会保険庁の立場でも、さまざまな効率化の努力が図られて然るべきとの考え方をもっている。
 医療保険制度の将来方向に関しては、保険者の一元化の方向性についても大事な課題であると思う。被用者保険と国保のあり方について、実質的な医療保険制度の一元化に向けた道筋を明らかにしていくため、被用者保険、国保のそれぞれについて統合・再編を促進するための具体的な検討を開始したい。
 とりわけ国保については、構造的な課題もあるので、介護保険制度と同様の広域化の推進をはじめ、保険者の財政基盤化の観点からの取り組みが必要であり、この点については、事前大臣協議で保険基盤安定制度を拡充するため、平成15年に保険者支援制度(仮称)を創設する等が決定した。また、健保組合についても、財政上厳しい小規模組合の統合を図るなど、保険者の統合・集約化を考えていかなければならない。


新たな高齢者医療制度を創設

<診療報酬体系の見直しについて>
 診療報酬については、患者の立場に立ったあるべき医療の姿を踏まえ、医療技術や医療機関の運営コストが適切に反映されるよう、体系的な見直しを進めることが非常に重要である。こうした見直しを行いながらも、当面の14年度診療報酬改定について大綱は、「改革の痛みを公平に分かち合う観点からも、賃金・物価の動向、昨今の経済動向、さらに保険財政の状況等を踏まえ、引き下げの方向で検討し、措置する」と明確に打ち出し、それを踏まえて最終的には、診療報酬改定△1.3%、薬価改定等△1.4%とすることで決着した。これにより、小泉総理の言う三方一両損、つまり、国民の負担、保険者の負担、医療機関の負担のバランスがうまく取れたと思っている。

<老人医療費の伸び率管理制度について>

 増大する一方の老人医療費を深刻に受け止め、老人医療費の伸びを適正なものとしていくことは大事な視点である。しかし、厚生労働省試案にあるように、伸び率を管理するとした場合には、良質な医療サービスが損なわれたり、往診拒否の事態があっては大変な混乱を生じるなど、国民に大きな不安を生じさせる恐れがある。
 そのため大綱では、老人医療費の伸びを適正なものとするための指針を定め、それを遵守していくという考え方を打ち出した。われわれは、抑制管理するための方策とかペナルティまでやるべきでないという考え方であり、指針を示し、遵守するためにどのように具体化するかはこれからの議論である。

<新たな高齢者医療制度について>
 70歳以上の高齢者の患者負担については、低所得者に配慮しながら、完全定率負担(一割)とする一方、一定以上所得者に対しては応分の負担(二割)を求める考え方を示した。具体的には、高齢者の急激な負担増を緩和するため、外来について低所得者八千円、一般一万二千円、一定以上所得者四万二百円といった自己負担限度額を設定することとしたことは高く評価している
 大綱では、高齢者医療制度については、これからの高齢化の一層の進展を踏まえ、新たな高齢者医療制度の実現を目指していくことを謳っているが、われわれは、新たな高齢者医療制度の創設の実現を速やかに目指していくべきことを主張してきた。われわれの考え方としては、後期高齢者である75歳以上を対象として、高齢者自らが負担能力に応じた保険料を負担することを基本に、保険制度間の公平が確保される制度の実現を目指したい。
 その際には、拠出金の具体的な取扱いを含めた若人の支援と公費の適切な組合せのほか、介護保険制度スタート後の高齢者医療制度との関係の明確化についても重要な検討課題であると考えている。
 今後とも、大綱の具体化に向けて、関係者とともに力を合わせて努力し、よりよい医療制度と医療保険制度のあるべき姿に一歩でも近づきたい。自民党としても、国民の健康と幸せのための抜本改革を念頭においた議論を引き続き精力的に行いたい。

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