4月18日(木)東京都内で開かれた医療セミナー「医療保険制度改革−−未来への選択」(主催(株)じほう)において、政策決定当事者の立場から
講演/パネルディスカッションを行いました。 |
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5ワーキングチームで議論再開
医療制度改革関連法案(健保法等改正案)をめぐる一連の制度改革論議は、昨年9月の厚生労働省改革試案の公表に始まり、11月29日の政府・与党社会保障改革協議会の「医療制度改革大綱」の取りまとめを挟み、法案を国会に提出する今年3月1日までの約6か月間に及ぶものとなった。振り返れば「長期戦だった」との印象だ。
とくに年明けからの議論では、サラリーマン本人の3割負担への引き上げの実施時期をめぐり、小泉純一郎首相が「2003年4月実施」を主張したのに対し、われわれ与党3党は、あくまで制度改革を先行させ、財政的に余裕ができた段階で被用者保険本人の3割への引き上げを求めるべきと主張するなど、議論が二転三転した。最終的には、与党3党の幹事長・政調会長、さらには坂口力厚生労働相、福田康夫官房長官を巻き込んで、「政治決着」の形で法案の提出を了承したいきさつは記憶にあると思う。
●関係団体の批判を聞き3割負担に反対
法案の審議は、19日に衆院本会議で審議入りする見通しで、われわれも国会審議の推移を見守りたいと思うが、自民党としては、法案の審議と平行して、さらなる取り組みを行なう考えで、党医療基本問題調査会の下に、(1)政管健保のあり方を含めた保険者の統合・再編 (2)診療報酬体系の見直し (3)医療提供体制の改革 (4)社会保険庁の改革(5)新しい高齢者医療制度の創設と、それに伴う医療保険制度体系の見直しーーの5つのワーキングチームを設置し、5月の連休明けから議論を開始する。その意味では、「政治決着」の形で3割負担問題が決着したものの、一連の改革論議のなかで、医療制度改革の将来を占う検討項目については、出尽くしたのではないかと考えている。
では、なぜ自民党が小泉首相の執心する03年4月からの被用者保険本人の3割負担引き上げに反対の立場をとったのか。われわれは議論の過程で、日本医師会や健保連から意見を聴取したが、そのなかで各団体から「今回の制度改革は財政のつじつま合わせに終始している」との批判を聞いた。とくに医療保険財政の安定化の観点から、厚労省が提案していた政管健保の保険料引き上げは、総報酬制を導入したうえで患者の窓口負担を2割から3割に引き上げるというものだったが、自民党の厚生関係議員の間からも、患者に「痛み」を強いる前に、「官(国)の痛みを求めるのが先だ」との強い意見が示された。
小泉首相は、今回の医療制度改革を「三方一両損」に例え、医療機関、保健加入者、患者を「三方」と位置付けていたが、自民党内部には、保健加入者と患者は同一だとして、国に痛みを求める主張を行っていた。後に小泉首相も「三方」ではなく「四方」一両損が正論だとして、われわれの考え方に賛同し、結果的に政管健保の設立主体である社会保険庁については、業務運営の効率化や合理化などの断行を法案の「附則」に盛り込むことになったことは評価している。
●改定内容の詳細な検証を
改革論議で、厚労省や財務省が医療費抑制の救世主として提案した「老人医療費の伸び率管理制度」についても、われわれは全国の医療機関に一律に罰則を課すような手法は問題があるとの認識から議論を重ねた。その結果、今回の提出法案については、「老人の医療費の適正化を図る指針」、いわゆるガイドラインを定めるという、いわば「訓示規定」を明確にすることにとどまった。今回の論議を振り返ると、3割負担問題ばかりが目立っている感もあるが、そればかりでないことを、あえて付け加えたい。
一方、今回の診療報酬改定については、ネットで2.7%のマイナス改定となった。もちろん技術料も1.3%の引き下げとなり、これが医療機関の経営に大きく影響を与えているとして、早くも医療現場からの声が自民党に届いている。医療機関にはいっそうのご苦労をかける結果になったが、改定内容は、必ずしも点数を引き下げたものばかりではなく、小児医療などではめりはりのある改定となった。
ただ、社会的入院の是正を目的とした長期入院患者の給付範囲の見直しなどは、今後の医療のめざすべき方向を示すものだとも聞いており、われわれももちろんだが、医療機関も病院経営の未来を探るという意味で、今回の改定内容を詳細に分析、検証してほしいと思う。後発品の使用環境の改善を目的とした処方せん料の見直しも行なわれており、後発品の使用促進のため、今後、市場環境がどのように変化していくのか注目していきたい。
いずれにしてもわれわれは、医療制度改革関連法案の国会審議の行方を見守ると同時に、制度改革で残された課題について積極的に議論を進めることにしており、法案の「附則」については、今年度中に基本方針を策定すべく、法案審議と並行して党内での議論を活発化させていきたいと考えている。
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