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 第351回一橋大学開放講座より(H14/10/17 学術総合センター内一橋記念講堂に おいて)
◆最近の政治経済情勢

 金田勝年でございます。昭和48年に一橋を卒業させていただいて、霞ヶ関と永田町に身をおいて合計して今年で丁度30年になります。その節目の年に、今日、折角このような貴重な機会をいただきましたので、公務員と政治家として合計30年過ごしてきた者として「政治」というものをどう見るかと いうことを、個人の意見として申し上げ、足りないものがあるとすれば何だったのかということに触れてみたいなと思っております。
 まず初めに、いま小泉政権、私は同じ自民党ですから、小泉総理のいいところもよく分かってますし、またこうあって欲しいなと思うところもあります。その小泉政権がかつて凄い高い支持率を持った。80%です。この前のワールドカップのときのロシア戦の視聴率が81%。あの時の国民の目は全部ワールドカップに集中していた。いずれも大変な数字なんです。80%の支持率はどうして出たか。
 去年の1月に「中央省庁改革」というのをやったわけですね。考え方は橋本総理、小渕総理のときからあったわけで、それが実施されたのは去年の1月からですから、森総理のときから。それで4月の総裁選のときに小泉さん が出てきた。その中央省庁改革の中でまず大臣の数を21人から18人に3人減らした。そして「内閣機能強化」というのがその主旨だったんです。なぜかと言うと、今の世の中の問題が役所と役所の間にまたがる問題が多いということ。だからこそ内閣機能を強化して、リーダーシップを発揮させるんだと。内閣全体のリーダーシップは政治がとるという主旨のもとに組織改革が行われたんです。
 正に小泉さん言う「構造改革をする」という、そして「リーダーシップを発揮するんだ」そういうことが現実に出来るという体制が1月に整った、その四ヶ月後に彼が総理になった、そういうことな わけですね。
 同時に副大臣というものをその代わりに増やしたし、政務官というものも増やした。副大臣が25人、政務官が27人おります。これはいままで政務次官24人だったんですが、それを増やした わけです。こうして、政治がリーダーシップをとらなきゃいけないという形を作ったわけですが、今の状況というのは、「省際の問題」がまだまだ残っていて、その全体の調整が出来ていないという感じがする わけです。
 例えばBSEが発生しました。屠畜場に生きている牛が運ばれて行くと、屠蓄場に入るまでは農林水産省の担当。屠蓄場に入った途端、美味しいステーキになって出てくるまでは厚生労働省の担当であります。
 デフレ対策もそうです。私は予算委員会の理事をやっていましたので見ていると、財務大臣は昔の大蔵大臣よりちょっと楽だというふうに、失礼ながらそういう印象をもってしまう。大蔵が財務と金融庁の二つに分割され、また日銀の独立が制度化されたので、予算と税の答弁はやりますが、金融の話になったら横を見るわけですね。横を見ると、日銀総裁がいる。個別の金融機関や不良債権の問題になったら、金融担当大臣の方を見るわけです。
 みんなそれぞれにデフレ対策に関係と責任があるわけですね。その他にもいっぱいいます。地方の景気や課題を扱うのは総務大臣。以前は自治大臣。他に国土交通大臣もいるし、経済産業大臣もいる。農林水産大臣や厚生労働大臣も各業界みなもっていますからね。例えば社会保障の負担が上って、給料が少なくなったら国民は消費を控える。そして将来の生活設計が出来なかったら不安が残りますから消費は絶対に控えるわけです。
 要するに、厚生労働省の中ではやる。農林水産省の中ではやる。それぞれの役所の中ではやるけれども、それを全体に上から見てる人っていうのは誰なんでしょうか。これがいるようでいないのが今の現状なのではないのかなというふうに思うんです。
 これを何とか変えていかなければいけない。私はそういうふうに思っています。要するに、本来内閣機能を強化して、総理大臣のリーダーシップの下に、経済財政諮問会議の担当大臣が日本の経済こうしなきゃいかん、日本の国、ここへもっていくんだという将来のビジョンを作る仕事がそこ(内閣府)のはずなんです。だからそこをしっかりとやらせるということが私はものすごい重要なことだと思います。
 そのために、各大臣が自分の守備範囲の庭先掃除だけをするんではなくて、その境目をまずカバーしてやろうとするならば、私だったら、与党の政調会長をそのポストにつければいいじゃないかと思っています。党での議論を集約して責任をもつのは政調会長なんですね。加えて与党の各部会、国土交通部会、財政金融部会、厚生労働部会……などの部会長を副大臣と兼務させる。こういうことを素直に速やかにやることが、国民や有権者の現場の必死の声を、役所の頭のいい人たちが一杯いるそういう人たちにぶつける手段ではないかなというふうに思うんです。なかなかそうはいかないみたいみたいでありますが、これは絶対に検討してもらわなければいけない部分であります。
 因みに、役人の皆さんは今大変意気消沈しております。大蔵省から始まって、最後は労働省、外務省までいったバッシングというか、反省する機会。やっぱり長きにわたった役所の体質を改める、そういうチャンスがこの5年間に全部の役所に行き渡りました。その間に「公務員倫理法」というのが出来ちゃったんですね。
 日本の公務員、全国で何人いると思いますか? 436万人いるんです。これは人口当たりでいくと、日本は他の先進国よりも少ないんです。国家公務員はそのうち111万人。地方公務員が324万7千人います。これは平成11年末の数字ですが ね。そのくらいの公務員の皆さんがエネルギーをもって、いろんな人の話を受け止めてやると。その中で政治のリーダーシップがとれるという状況がなければいけない。そういうことをまず省際問題ということで非常に感ずるわけです。
 ところで「公務員と政治家」ということで考えた場合に、我が一橋、華々しく東京商大の伝統を受け継いで、大半の皆さんは銀行・商社含めて経済界・実業界に進まれます。公務員、政治家そしてマスコミというのは余り数がいない。マイナーな分野というふうに思われるかもしれません。そういう仕事にも、我が一橋の後輩にもたくさん入ってもらいたいなというのが私の気持ちにあるんです。
 ある人がこう言ってました。マスコミは特ダネが非常に重要ですから、今日明日に命懸けなんですね。役人は予算も税も単年度、人事異動も一年二年でぼんぼんあるもんですから、一生懸命来年の仕事をする。じゃ政治家は何だって言ったら、次の選挙のことばかり考えているそうです(笑)。言われてみればそのとおりだと 思う面もあります。それを打破していただくような根性のある我が後輩、一橋の後輩にたくさん入ってもらって、そういうところを「そうじゃないぞ。俺は5年後、10年後 、20年後の日本と地域そして経済社会を考えているぞ」というようなロマンを聞かせて欲しいなという感じがするわけです。生意気なことを言うようですが、そこも非常に重要なポイントじゃないかというふうに思っております。
 現下の政治経済情勢を考えるうえでは、今まで縷々述べてきたような「省際問題」や「政治家と公務員」といった論点のほか「市場競争原理」「生産者と消費者」「都会と地方」などの面からも論ずることが出来ると思います。
 以上、時間に追われてお話ししましたので舌足らずで不十分な話になりましたことを申し訳なく思っておりますが、今後とも是非、先輩そして同僚、後輩の皆様方のますますのご健勝とご活躍をお祈りし、またこれからも一緒にお話が出来る機会をもてますようお願い申し上げ まして、終わらせていただきます。
ご清聴どうもありがとうございました。

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