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 納税通信 1/13日号 「一筆啓上」より
◆税制の議論でも子育てを考えて

 平成15年度税制改正大綱に、「配偶者特別控除の廃止」が盛り込まれた。これにより、専業主婦のいる世帯では38万円の控除枠が削られ、その分税負担が増えることになる。しかし、少し視野を広げると子育て支援体制の充実に向けた新たな財源が確保されているのが分かる。控除制度の廃止に合わせて、歳出面で2500億円が子育て家庭をバックアップするための予算として別枠で確保されたのだ。参議院厚生労働委員長として、また自由民主党前厚生労働部会長・現少子化対策小委員長として「専業主婦と働く女性の双方にやさしい税制」を追求してきた我が身にとって、今回の配偶者特別控除廃止をめぐる論議はまさに正念場であった。
 今回の所得税の税制改正論議の課題は「広く公平に」。これについては、@所得税の簡素化 A専業主婦世帯と夫婦共働き世帯との公平論ーーーを念頭に置きながら議論されてきたところである。
一方、配偶者特別控除は、そもそも「専業主婦世帯の負担軽減」という趣旨で昭和62年に登場した制度である。当時は今ほど共働き家庭は多くなかった。それから16年。夫婦共働き世帯が増え、「配偶者特別控除は専業主婦世帯への優遇制度であり不公平」とする見方が共働き世帯を中心に広がってきたなかで廃止案が浮上した。税の議論では、常にオリジン(起源)の検討が重要となるのだ。
 しかし、ただ「廃止」としただけでは、単なる増税である。「取りっぱなし」では国民は納得しない。増税によって国に入ってきた税金をどう使うか。これが重要となる。配偶者特別控除を廃止するということは、専業主婦世帯の負担を重くするということだ。それならば、その分を子育て支援に回すことはできないものかーーー。
 「配偶者特別控除を廃止するなら、子育て支援の拡充と一体で考えるべき」。今回の税制論議では、この点を自民党税制調査会小委員会の場で強く申し入れをした。結果、配偶者特別控除の廃止は決定したものの、児童手当の拡充を中心とした2500億円の財源が確保されたほか、16歳以上23歳未満の子供がいる世帯を対象とした特定扶養控除の廃止が見送られることとなった。専業主婦世帯の負担を最小限に食い止めながら、共働き世帯の不公平感を和らげ、公平課税へ一歩近づくことに成功したわけだ。新たな財源確保はまた、日本全体の課題である少子化問題もカバーしている。この点は大いに注目すべき点といえよう。
 自民党厚生労働部会では、平成15年度予算の筆頭に「次世代の育成を支援する少子化対策の推進」を挙げ、地域における子育て支援体制や保育サービスの充実、子育て生活に配慮した働き方の充実などの施策を総合的に推進する方向だ。併せて、政府の少子化対策である「少子化対策プラスワン」を進めるための法律、「次世代育成支援対策推進法案」(仮称)が今年の通常国会に提出される。同法案では、都道府県や従業員300人以上の企業に、育児休業の取得促進などを盛り込んだ行動計画の策定を義務付ける。少子化対策では、「産みやすく育てやすい環境づくり」が重要だ。この分野でも、税制の整備を含めた総合的なフォローが必要となってくるのは言うまでもない。

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