トピックス

日本保育協会誌「保育界」5月号より

インタビュー金田委員長に聞く
   --子育てに夢や希望を持てる環境づくり--

――はじめに、わが国における少子化の現状は、どのようになっているのかお教えください。
 「わが国では、出生数及び合計特殊出生率が近年一貫して低下を続けており、平成13年には、出生数は117万人、出生率は1.33となり、いずれも過去最低を記録しました。少子化の要因については、従来、『晩婚化・未婚化の進行』が指摘されてきましたが、昨年1月に公表された新人口推計では、これに加えて、『夫婦の出生力の低下(結婚した夫婦が生む子供の数の低下)』という新たな現象が把握されるなど、今後一層少子化が進行することが予測されています。
 少子化の進行は、労働力人口の減少や地域社会の人口減などを通じて、社会保障をはじめ、わが国の社会経済に重大な影響を与えるとともに、子供同士の交流の機会の減少などにより、子供自身の健やかな成長に影響を与えることなどが懸念されます。このため、国の基本政策として、改めて、少子化の流れを変えるための対策を強力に進める必要があると考えています。」

――今後、どのような観点から施策の充実を図るべきでしょうか。
 「現在、結婚した夫婦の平均出生児数は約2.2人ですが、理想とする子供数とは近年一貫して0.3〜0.5程度の開きがあります。このため、夫婦の平均出生児数を理想子供数の平均である約2.5人に近づけることができるよう、『子供を持ちたい人が生み育てやすい環境を整える施策』を精力的に進めていく必要があると考えています。
 先般、政府において、『男性を含めた働き方の見直し』や『地域における子育て支援』を強化する方針が打ち出されましたが、今後さらに、その方向での対策の強化を図ることが重要であると考えています。あわせて、将来家庭を持って子育てをする今の子供や若者について、社会性や豊かな人間性を育んだり、経済的・精神的な自立を促したりする、言わば『次世代の親づくり』に取り組むことも重要です。
 今回、国会に提出された『次世代育成支援対策推進法案」は、すべての地方公共団体や大企業に行動計画の策定を義務付け、それぞれの地域や企業において、これらの取り組みを進めようとするものであり、法案が成立すれば、47都道府県、約三千三百の市町村、一万三千を越える企業等における行動計画づくりが一斉にスタートすることになります。」

――少子化対策に関して、委員会では様々な意見があり、別途、少子化問題調査会も設置されましたが、どのような状況だったのでしょうか。
 「小委員会では、少子化への対応については、『子供を持ちたい人が生み育てやすい環境を整える施策』だけでなく、『教育論、家族論、国家論も含めた大所高所からの議論が必要ではないか』とのご意見もありました。このため、麻生政調会長と相談し、『教育論、国家論、家族問題など、少子化の流れを変えるための国家としての基本的な課題への対応』については、別途設置される少子化問題調査会の場で議論し、委員会では、子供を持ちたい人が生み育てやすい環境を整備する、いわゆる『子育て支援策』について議論を行うとの整備をしていただきました。
 去る3月19日には、第一回の調査会が開催され、私も幹事の一員として、少子化問題は縦割り行政では対応できない問題であること、家族や家庭といったことについての教育が重要であることなどについて申し上げました。少子化問題については、年金や医療の支え手の問題という発想で捕らえがちですが、この調査会では、より幅広い見地からわが国の将来を見据えた議論が行われるものと大いに期待しています。」

――政府による「次世代育成支援対策推進法案」及び「児童福祉法一部改正案」についての委員会での審議状況をお聞かせください。
 「当初は、今回の法案の意義が不明確ではないか、との指摘がありました。このため私から厚生労働省に対して、推進法案等の意義を改めて整備するよう指示し、推進法案等は、地方自治体や企業等による行動計画の策定により、『地域のニーズに即した子育て支援』と『働き方の見直し』について、バランスの取れた取り組みを促進するという意義があることなどを明確にし、各議員のご理解をいただけるよう努めました。なお、一部に異論はありましたが、『少子化の進行が極めて深刻な現状にあっては、自治体や企業における取り組みをとにかく進めることが必要』といった意見が多かった中で、委員会としては、概ねご理解をいただいたものとして、厚生労働部会に諮ることとしました。
 その後も、委員長として関係各議員との調整に努めた結果、二法案については、3月11日の自民党厚生労働部会、政務調査会・審議及び総務会での了解が得られ、3月14日に閣議決定されました。」

――少子化問題小委員会は、調査会の設置に伴い「子育て支援対策小委員会」に名称変更されたそうですが、今後、委員会の運営にどう取り組むのですか。
 「今回の推進法案等が成立すれば、地域や企業における次世代育成支援の取り組みを着実に進めるための枠組みが整備されることとなりますが、その後の課題として、地方公共団体や事業主が策定する行動計画を充実したものとしていくことが必要です。
 今後、委員会としても、行動計画策定のために国が定める指針の内容に関心を持って取り組んでいこうと考えています。また、各自治体が行動計画に基づく取り組みを進めるために必要な国の財源確保策についても、積極的な対応が必要と認識しています。引き続き、次世代育成支援の取り組みを着実に進め、子供を持つことや育てることに夢や希望を持てるような環境づくりに努力して参ります。」

――最後に、保育所に対して今後期待することをお聞かせください。
 「近年、親の就労形態が多様化するとともに、地域の子育て機能の低下が全国的に指摘されている中、今後、地域における子育て支援サービスの充実を図っていくためには、保育士といったマンパワーや子育てに関するノウハウ・経験を有している保育所が果たすべき役割は非常に大きいと考えています。例えば、育児疲れの時などに子供を一時的に預かるサービスの提供や親子のつどいの場のための園庭開放など、地域住民のニーズにきめ細かに対応したサービスの担い手になっていただきたいと考えています。
 今後、各自治体で行動計画の策定が進められますが、こうした保育所の取り組みに関しても行動計画に十分盛り込まれ、保育所が子育て支援に関する地域の核となっていただくことを大いに期待しています。なお、児童福祉法改正案においては、一定数以上の待機児童を有するなど、保育の需要が高まっている市町村や都道府県について、推進法案に基づく行動計画の策定と併せて、保育所の整備など、待機児童の解消を図るための計画の策定を義務付けることとしています。今後、待機児童の解消に向けて、これらの計画などに基づき、引き続き保育所の整備を着実に進めていくことも重要であると考えています。」

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