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〜ゼミ教官の一周忌に「母校 追悼文集」に寄せて〜
懐かしい大学時代に最も尊敬していた教官が、昨年亡くなられました。先生を 慕って、仲間たちで 追悼の文集を出すことになり、金田も寄稿しました。

優しかった荒先生
                                  金田勝年(昭和48年卒)

 今から34年前になるだろうか。先生との初めての出会いは、小平から国立に移ったばかりの時だった。私が「荒ゼミに入りたい」と研究室を訪ねたところ、とても優しい大きな目でじっと私を見つめながら志望動機を聞いてくれたそのお顔をいまでも鮮明に覚えている。私は、「どうして も公務員になりたい。そのためには先生のゼミで勉強することが一番ふさわしいと先輩から聞きました」と答えると、「そう、君は公務員を志望しているんだ。じゃ、僕のゼミで頑張ってみなさい」…… 私の人生の大きな転機は確かにあの時の出会いにあった。

 今の学生諸君には想像もつかないだろうが、昭和44年春、私が入学した時は70年安保を前に大学紛争華やかなりし時で、我が一橋もその例外ではなく、一年生の大半は授業もなく、学生はデモにアルバイトにマージャンにコンパに勉強にと、それぞれが自分の関心事に存分の時間を費やしていた。
 2年の時も教室の中でまともに勉強した記憶はほとんどなく、そんな中で、荒ゼミだけは間違いなく経済学部の超優秀な学生が集まっていた。倍率も高く、ゼミテンとして選ばれた我々12人は、日本で一番レベルの高い経済学を学んでいるという誇りをもって後半の2年を過ごすことができた。もっとも私自身はその中でも理論経済学でついていくのにやっとの部類に入っていたが……。 
 そんな私たちが先生に特に親しみを感じたのはゼミの旅行の時であった。
先生はマージャンがお好きで、夜飲んだ後は遅くまで楽しく付き合ってくれたものだ。ジャンパイを並べながら交わす会話は先生のすばらしく優しい人柄がにじみ出るものばかり。メンバー集めとなるといつも私を頼りにして下さったのも懐かしい。

 私が大蔵省で予算や税中心のキャリアが長くなるにつれて、会うと「最近はマージャンやってるかい?」という言葉と、「君は僕の歴代ゼミテンの中で最も政治家に向いていると思うよ。その時は応援に行くよ!」という言葉をかけてくださった。この二つが私の今日の支えになっている気がする。
 今日自分があるのはまぎれもなく荒先生の励ましのお陰だ。大好きな荒先生に心からご冥福を祈りたい。

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