トピックス

◆5月11日秋田経済同友会にて講演


連休明けの5月11日、(社)秋田経済同友会平成16年度通常総会終了後の特別講演会に講師としてお招きをいただきました。
実は昨年夏以来、当方の日程の都合によりなかなか実現できず、楽しみにしていたところ、総会後の大切な会に呼んでいただき感謝で一杯でした。

「最近の政治経済情勢」をテーマ
 1.政治状況全般
 2.経済情勢について
 3.社会保障制度改革について
 4.外交問題と憲法改正
 5.その他

というレジュメを準備したのですが、政財界でご活躍でそれぞれの政策に詳しい皆さんの前に立つと、あれもこれも話したくなり少々長くなって反省したところでした。

〜講演要旨〜

 最初に、私が日ごろ感じていること、考えていることから話を進めたいと思います。
政治家の生活というのは皆さんが思っているよりは大変なことが多いです。例えば、今日の私の行動ですが、6時に起床して7時45分から8時50分まで自民党と経団連の勉強会に出 席し、地球温暖化対策と環境税の構想について意見交換。9時からは安倍幹事長が委員長で定期的に開いている党改革の検証推進委員会に出席。その後、国会対策委員会、議員運営委員会 を走り回り、厚生労働委員会に出てからこの講演に間に合わせて空路秋田に飛んできました。講演会が終わり次第、東京に舞い戻るといろいろな用務が待ち受けております。
 今日のスケジュールをざっと申し上げましたが、その時により多少の違いがあるものの毎日、毎日がこんな生活をしているのが政治家だと思って下さい。

 私は平均して年間120回、東京と秋田を往復しています。たまには一日に一往復半ということもあります。そうしたことが可能になったのは、なんと言っても飛行機、新幹線といった高速交通が整備されたからこそです。秋田県の面積は広い、といつも思っています。その広い県内69市町村を必要に応じて行ったり来たりするものですから、適宜、秋田空港・大館能代空港・青森空港・庄内空港を利用しております。 

 旧大蔵省で22年、国会で9年。霞ヶ関・永田町生活が31年目に入りました。この間、ずっと見てきて思うことの一つは、国会議員の数のことです。国会議員は今、727人います。480人は衆議院議員で、参議院議員は247人。参議院議員は今度の選挙時には242人に減ります。参議院議員はもともと減らされているのに何故また、という思いもありますが、世の中にはそうした考えは通用しないという人もいるのも確かです。

 それはともかくとして、衆議院議員の半分が参議院議員だと考えていただくといいのです。特に2ヶ月先に参院選が控えている今は、半分の方々は殆ど地元に帰っていたり、全国を回ったりしていて、重要法案の採決の時だけ国会にいるということになります。だから、参議院は247人の議員がいるはずなのですが、実際には120人そこそこの議員に国会が任されている形となっています。

 一方の衆議院議員は480人。参議院はその4分の1で国会を運営することを余儀なくされているわけで、一時的なこととは言え、考えてみればこれは大変なことです。
従って、一院制にするのか、しないのかも憲法問題の大きなテーマになってくると思います。一院制にするという議論の中では、当然、本来なぜ二院制だったのかということも出てくるでしょう。

◇ 多くの国会提出法案の中で極端に少ない議員立法

 国の政治を担っている国会には二つの柱があります。一つは、国会対策委員会、議院運営委員会といった国会対策の柱。もう一つは、政務調査会・政策審議会という政策の柱。この二つが 噛み合って政治が動いているのですが、これからの政治家にはその両方に精通することが特に必要になってくると思っています。

 今通常国会は1月19日から始まり、会期は150日間ですから6月16日で終わります。私は現在、議院運営委員会の次席理事を務めておりますので、国会中は常に拘束され国会にいなければなりません。

 今の国会にかかっている法案は175件。そんなにあるのかと思われるかも知れませんが、そのうち予算関連が6件、条約と承認案件が23件、残りはその他の法案ということになります。殆どは政府提出法案で、議員立法は18件に過ぎません。
 日本はアメリカなんかと比べて議員立法が極端に少ないのです。どうしてそうなのか。日本は役人が優秀だから、とも言われていますが、外にも訳があります。

 アメリカは上院と下院があり、上院の議員は一人で50人もの秘書を抱えることができます。下院の議員にも15人程度の秘書がいるのが普通です。この秘書の面倒を全部国がみています。それに比べ、国が面倒をみている日本の国会議員の秘書は3人だけ。そんなところにも議員立法が少ない理由があるのではと思います。
 裏を返せば、アメリカのように秘書がやっている政策の立案・法案作りを、日本は役所がやってくれているんだから多くの秘書は要らないということになっているのかも知れません。

 以前は国の役所は21省庁でしたが、現在は1府12省庁です。そこから多くの法案が出てきて国会審議を経て法案が成立していきます。今国会は参院選を控えていますので会期延長はありません。そんな中で提出されている175件の内、何件が通るか。いろいろな問題もあり、終盤国会はかなりデリケートになるのではと思われます。

◇ 7月11日投開票の参院選は極めて重要な意味がある

 6月24日公示、7月11日投開票の参院選は重要な選挙だと思います。その選挙が終わると3年後にはまた参院選があります。衆院選は去年の11月にあったばかりなので、特別なことがない限り今度の参院選が終わると3年後までは国政レベルの選挙はない 可能性が高いです。その間に大きな政策課題を論議する必要があり、その政治基盤をつくる意味でも今度の選挙は極めて大事な選挙と言えます。そんな見方が一般的です。

 いずれにしても、税制にしても郵政の問題にしても、年金の問題にしても国の根本にかかわる改革なので、時間はかかるがじっくり取り組まなければなりません。そのための前提となるのが 政治に加え経済の安定です。
 経済が安定する方向にまずもっていって、その中で大きな問題に時間をかけて取り組んでいく、という考え方を政治家のリーダーたちは持っていると思います。

 例えば憲法の問題ですが、来年は自民党の立党50周年。来年の11月に記念式典をやることになると思いますが、その時までには必要な議論を深めた上で憲法改革の草案を出 していきます。自民党が与党である限り、それは間違いないと思われます。

 税制に関しても昨年12月に話が出ています。16年度は年金課税を強化しました。負担の面を考えると社会保障の分野は三つしかありません。医療も介護も年金もそうですが、要するに皆さんが納めた保険料か 公費か、あるいは本人負担かの三つです。公費といってもその裏は税金にほかなりません。となると、いずれも国民の皆さんの負担ということになります。
 だから、これをどう位置づけていくかといった場合、例えば基礎年金の国費負担を3分の1から2分の1に増やすというのが今回の法案ですが、それも財源がないとできません。

 そこで、それに充てるため16年度は年金課税強化を、17年度・18年度は所得課税の見直しをして賄い、19年度になったら消費税という議論が出てくると思われます。だからこうしたことも含めてこれからの3年間は解決が迫られる課題も多く、ある意味では難しい時代に入ると考えざるを得ないと思います。

◇ 今の選挙制度はこのままでいいのか。

 私がいつも思っていることの一つに、今の選挙制度の問題があります。私のみならず国会議員の中には、今の小選挙区制度に心の中では否定的な考え方をしている人が結構多いのではないかと思います。例えば、新人が出にくいとか、あるいは得票率50%の人が当選して、投票率40%の人が落選すると大量の票が死に票になってしまうなど理由はいろいろあります。

 東京都の面積は秋田県の5分の1。にもかかわらず、そこから出てくる衆議院議員は驚くなかれ42人もおります。秋田県からの衆議院議員は3人だけ。比例を考えても一人か二人増えるだけです。場合によっては地方の我々の声がかき消されてしまうのは当然であり、基本的な部分でもっと検討していかなければならない問題です。

 この前の衆議院で落選した人の中で一番多い得票は約11万7千票。ところが当選者の最小得票はなんと約1万8千票。有権者から一旦当選を拒まれたものの、比例で復活して当選した人が120人おりました。そのうち最小得票者の票が約1万8千票なのであります。いくら制度だというものの11万7千票の支持があっても落選する人もいれば、たった1万8千票で当選する人もいるという現実はおかしいのではないかと思うのです。

 あらゆる制度に絶対というものはないにしても、こうした選挙制度については引き続き検討していく必要があります。

◇ 一般会計歳出総額の4割を超える社会保障費

 小泉総理についてある長老は「外交ではまあまあ成功しているが、経済と人事では失敗した」と本人に面と向かって言ったとう話があります。それはそれとしても、小泉さんにはある意味で素晴らしいリーダーシップがあると思います。

 戦後の流れを見てみると、総理の決断として評価されたものに日米安保条約の批准、消費税の導入などがあります。イラクの復興支援という範囲内で、非常にリスキーではあるのですが、法律をきっちり組み立ててイラクへの自衛隊を派遣したのは国としての誇りを世界の国々に示すという意味に おいて小泉総理の大きな決断でした。これは得意の外交の一面の表れとも受け取れますが、イラク問題など今後の外交を考えると決断を迫られる諸問題がなお横たわっていると思います。

 近年の経済・社会情勢は大きく変化してきています。国民の平均寿命は大幅に伸び、平成13年の健康寿命 73.6歳(=介護の必要なく、心身ともに自立した活動的な状態で生存できる期間)は世界一。少子高齢化は顕著で、社会保障の先行きに対する不安は大きい。高齢化は急速に進んでおり、今後も世界の主要国においても例を見ない速さで進んでいくことが予想されます。

 私見ですが、今の時代は、75歳以上でないと高齢者と言えないんじゃないかと思っています。雇用の面から考えると65歳を基準にした方がいいというのが一般的なのでそうなっていますが、医療面を考える場合はこれからは65歳から75歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者として対応していく考え方も必要になってくるだろうと思います。

 国の16年度一般会計歳出総額はざっと82兆円。その内4割を超えているのが社会保障費で約19兆8千億円。それに対して公共事業費は約7兆8千億円、文教及び科学振興費が約6兆円、防衛費が約5兆円などであります。

 社会保障費の内訳は医療が約8兆1千億円、年金が約5兆8千億円、介護が約1兆7千億円。昭和51年度から平成16年度に至る一般歳出及び社会保障関係費の推移を見ると医療、年金、介護がどんどん増えているのが明らかで、それに伴い社会保障の給付と負担も増えています。 予算に限らず給付全体で見ても2000年では約78兆円。その内年金が約41兆円、医療が約26兆円、残りが福祉・その他。これらも年を追って増えていくことが予想されています。

 ここで社会保障制度の変遷を振り返ってみます。昭和20年代には戦後の緊急援護と基盤整備が行われ、昭和30年代、40年代は国民皆保険・皆年金と社会保障制度が発展してきた時代。福祉元年といわれた昭和48年には老人医療費の無料化、年金給付額の改善が行われています。

 そして、昭和50年代、60年代になると、安定成長への移行と社会保障制度の見直しということで、老人保険制度を創設したり健康保険本人1割負担の導入をしたりしました。また基礎年金の創設、給付水準の適正化を図ったのは昭和60年。
 
 いま話題になっている年金で、強制加入になったと言われているのがこれで、昭和60年に法律が通り、昭和61年4月から施行されました。それから18年経っています。国民年金の加入率が低いなどの問題をどう解決し ていくかなどこれからの課題でもあります。

 平成になってからは少子高齢化に対応した社会保障制度の構築をした時代。福祉3プラン、いわゆるゴールドプラン、エンジェルプラン、障害者プランの策定と推進、厚生年金の支給開始年齢の引き上げ、介護保険の創設、老人医療1割負担の徹底、健康保険本人3割負担などがありました。

◇ 年金、医療、介護は社会保障制度全体の在り方の中で検討

 このように年金、医療、介護、生活保護、次世代育成支援、多様な働き方など各分野の社会保障制度はそれぞれの議論を踏まえて改革してきました。これから改革と いうものもあります。次世代育成支援というのは、いわゆる少子化対策のことです。私はいま、自民党の少子化対策の委員長もやっておりますが、前国会で次世代育成支援法という法律も通り、その実行への途上にあります。

 新たな高齢者医療制度に関する検討も続けられていますが、これは75歳以上の人、65歳から75歳までの人、65歳以下の人をきちんと分けた高齢者医療制度にしていこうとする考え方です。今、議論の最中で、17年に内容を固めて18年に法律を出すことになっています。

 年金、医療、介護についてもそれぞれ検討を加えていますが、これをバラバラにやっていくのではなく、社会保障制度の在り方を全体的に捉えた中でやっていこうというのが、いわゆる「三党合意」です。これを進めていく裏には税制改正があり、消費税をどう考えるかの議論が必ず出てきます。

 例えば、消費税を充てるのにふさわしいものは年金か、医療か、介護か。基礎年金の部分を全部消費税で賄うと生活保護と同じになるという考え方もあります。保険料を支払わなくても一ヶ月6万5千円を全部税金で支給する、と声を大にしている政党もあります。基礎年金といえども保険の世界ですから、負担 をするという自助努力があって初めて共助がある。だから2分の1は国が税金で負担しても、それ以上は納めてもらう年金保険料で賄うというのが与党の考え方です。ところが、2分の1の財源 自体もどんどん膨らんでくるのですから問題は大きい。

 「揺り籠から墓場まで」という言葉があるように、誰にでも密接に関係あるのが社会保障。私はみんなの幸せを考えて特にこの分野の仕事に意欲を燃やしてきたし、これからもその気持ちに変わりはありません。

◇ 確実に実現を目指さなければならない4つの政治課題

 政治課題として今、言えることは4つあると思います。一つは雇用をよくしていかなければならいないということ。それは景気をよくすることと同じ意味を持ちます。二つ目は、中小企業にもっと金が回るようにしなければならない。三つ目は、社会保障全体をさらに良くしていかなければならない。将来の安心につながる社会保障が確立されれば国民の消費が増え、それが景気回復にも好影響をもたらす。そして四つ目は、規制緩和を して市場原理に任せるべき分野と、そうでなくて、社会の安定のためにある程度コントロールが必要な分野をきちんと分けて取り組んでいかなければならないのも政治課題であります。

 この四つが徹底してくるといろんな面でかなり良くなってくると思いますが、その一方では現代の難しい対立構造があります。例えば大都市と地方、大企業と中小企業、製造業と非製造業、生産者と消費者、働き手と高齢者などがそれであ ります。それから政と官と民の対立も含まれているかも知れません。

 こうした対立構造をもっていますから、問題はどのようにしてお互いが認め合い、支え合って成熟した国の姿を創っていくかであります。外に向けてはアジアとの関係を大事にしていかなければならないし、国連、アメリカとの関係にも配慮していかなければならないのは勿論です。そんなことを各論の世界で時間をかけて努力していくしかないと思っています。

 政治のポイントは何といっても分かり易くないといけないし、言うべきことはしっかり言う政治でなければな りません。こうしたことをしっかり心に受け止めて、頑張っていくのが私に課せられた務めだと、常々自分に言い聞かせております。
 

※このホームページに掲載の記事、写真などの無断転載を禁じます。全ての
著作権は金田勝年及び金田勝年事務所に属します。 


《東京事務所》03-3508-7053

国会で成立した法律についての資料等ご希望であれば、お気軽にご連絡ください


Copyright (c)2000-2002 金田勝年事務所. All right reserved.